「クロヨン(9:6:4)」は今も本当?所得捕捉率の現状と、自営業者が実践すべき備え

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「クロヨン(9:6:4)」は今も本当?所得捕捉率の現状と、自営業者が実践すべき備え

「クロヨンは今も本当?」という見出しと「9:6:4? 所得捕捉率と根拠ある申告」のサブコピーを配置した、クロヨン問題をテーマにした記事用メインビジュアル
「クロヨン(9:6:4)」は今も実態を表しているのか。

給付付き税額控除をめぐる報道などをきっかけに、再び「クロヨン」という言葉が注目されています。この記事では、クロヨンの本来の意味、現在も「9:6:4」と言えるのか、自営業者が実践すべき備えを整理します。

給付付き税額控除をめぐる2026年初頭の報道などで、再び「クロヨン」という言葉が注目を集めています。これは、会社員・自営業者・農業者の間で、税務当局が所得を把握する割合、いわゆる所得捕捉率に格差があることを指す古くからの議論です。

この記事では、以下の3つのポイントを整理して解説します。

  • 「クロヨン(9:6:4)」という言葉の本来の意味
  • この比率が現在の実態を表していると言えるのか
  • 不公平感の議論に振り回されず、自営業者が自身の申告を守るために今できること

結論から申し上げますと、クロヨンが示す「所得把握の仕組みの違い」は実在しますが、「9:6:4」という具体的な数値を現在の正確な実態として扱うのは適切ではありません

自営業者やフリーランスの方にとって重要なのは、不確実な数値の真偽に惑わされることではありません。「所得を自己申告し、経費判断に幅がある」という自営業ならではの仕組みを理解したうえで、客観的な根拠に基づく適切な記帳と申告を行うことです。

1. 「クロヨン」とは何か

「クロヨン」とは、職業によって税務当局が所得を把握する割合に格差があるのではないか、という不公平感を表した言葉です。「9(ク)」「6(ロ)」「4(ヨン)」の語呂合わせに由来しています。

ここでいう「所得捕捉率」とは、実際の所得に対して税務当局がどれくらい把握できているかを示す比率です。たとえば、実際の所得が100万円のケースにおいて、税務署がそのうち90万円分の所得を把握できているとすれば、所得捕捉率は「90%」となります。

古くから、この捕捉率には以下のような職業別の格差があるとされてきました。これが「クロヨン」と呼ばれる仕組みです。

  • 給与所得者(会社員など):約9割
  • 事業所得者(自営業者など):約6割
  • 農林水産業者(農業者など):約4割

重要な前提

日本の税務当局は、所得捕捉率の公式な統計を公表していません。そのため「9:6:4」という比率は、現在の公式データとして扱うのではなく、当時の国民の実感や推計に基づいて語り継がれてきた目安として捉える必要があります。

2. なぜ会社員と自営業者で所得把握に差が生まれるのか

職業間で所得の把握されやすさに差が生じる最大の要因は、所得を「誰が」「どのように」国に申告しているかという、制度設計の違いにあります。

会社員などの給与所得者には、「源泉徴収」という仕組みが適用されています。これは、会社が毎月の給与を支払う際に、あらかじめ所得税を差し引いて国に納付する制度です。本人が自分の所得を計算して申告する前に、給与データが勤務先を通じて税務システムに登録されるため、所得を少なく見せて申告する余地は原則としてありません。

一方、自営業者は「申告納税」が基本です。自ら売上を計算し、そこから事業に必要な「経費」を差し引いて所得、つまり利益を算出し、確定申告を行います。

この過程で、どうしても「判断の幅」が生じるのが、事業用の経費とプライベートの生活費の境界線(家事按分)です。

  • 仕事とプライベートの双方で使う自動車のガソリン代や維持費
  • 自宅兼仕事場の家賃、電気代、インターネット回線費用
  • 取引先との関係構築を兼ねた飲食代

これらを「どのような基準で仕事用と私用に分けるか」については、各々の業務実態に応じた判断が求められます。この「判断の幅」が存在することが、会社員側から見たときの不公平感や、所得把握の難しさという議論につながってきました。

会社員は「給与→勤務先→国・税務システム」、自営業者は「売上・経費→家事按分・経費判断→確定申告」という流れで、所得把握の仕組みの違いを比較した図
会社員は勤務先経由、自営業者は自己申告と経費判断によって所得が把握されます。

会社員と自営業者の所得把握における特徴を、以下の表に整理しました。

会社員と自営業者の所得把握の違い
項目 会社員(給与所得) 自営業者(事業所得)
申告方法 会社による源泉徴収・年末調整 自身による確定申告
所得の算出方法 給与額から給与所得控除を差し引く 売上総額から実際の必要経費を差し引く
経費の判断 個別の判断はほぼ不要 事業用とプライベート用の按分基準を自分で判断
所得の把握されやすさ 非常に高い 経費判断の幅があるため、客観的な把握に手間を要する

なお、会社員には実質的な概算経費として「給与所得控除」という一律の控除枠が設けられており、一方的に税制上の不利益を被っているわけではありません。クロヨン問題は、「自営業者だけが得をしている」という単純な構造ではなく、所得を把握するアプローチが仕組みとして異なっていると捉えるのが正確です。

3. 「今も9:6:4」という比率は正しいのか

では、現代においても所得捕捉率は「9:6:4」のままでしょうか。

結論から申し上げますと、現在もその比率が正確に保たれているとは言えません。

1970年代のデータに基づく初期の研究では「9:6:4」に近い格差が指摘されていましたが、その後の税制改正や税務インフラの整備、取引の電子化などに伴い、格差は縮小しているという見方があります。

内閣府の分析レポートでは、1977年時点では「9:7:4」に近い状態であった格差が、1997年時点の推計では「10:9:8」に近い比率まで縮まっていることが示されています。

一方で、格差が完全に解消されたと結論付けるのは時期尚早であるという指摘もあります。日本総合研究所の論考では、捕捉率の推計に不可欠な統計データの前提条件が近年の経済構造変化によって揺らいでいるとし、「1990年代以降に格差が大幅に縮小した」と断定することには慎重な見方が示されています。

また、比較的最近の研究として、内閣府 経済社会総合研究所(ESRI)が2021年に公表した分析結果があります。2009年〜2019年の家計パネルデータを用い、同程度の申告所得を持つ会社員世帯と自営業世帯の家計支出を比較する手法により、自営業世帯において、可処分所得が約33.0%〜36.4%過少に申告されている可能性が示されています。

これは推計値に基づく分析であり、すべての自営業者にそのまま当てはめられる数字ではありません。ただし、所得把握における課題が現代においても一定程度残されていることを示唆する資料として、参考になるものです。

クロヨンに関する従来イメージと近年の研究
従来のイメージ(9:6:4) 近年の研究・実証分析から言えること
格差は固定されている 1970年代に比べると、格差自体は縮小傾向にあるとの分析があります。
数字に科学的根拠がある 所得捕捉率の正確な測定は難しく、推計手法や用いる統計によって数値は変動します。
格差はすでに解消された 自営業世帯に一定の過少申告の可能性を指摘する推計もあり、制度上の課題は残っています。

このように、クロヨンが問題視してきた「所得捕捉の難易度差」という構造そのものは残っていると考えられます。しかし、「9:6:4」という特定の比率を現代の実態として語るのには無理がある、というのが客観的な事実に基づいた理解と言えます。

4. 誰もが陥りやすい「自営業者=脱税」という誤解

クロヨンの議論において、最も避けるべきなのは「自営業者はみんな所得をごまかしている」と受け止めてしまうことです。これは明らかな誤解です。

税務調査などで指摘される「申告漏れ」には、意図的で悪質な所得隠しだけが含まれているわけではありません。実際には、以下のようなケースもあります。

  1. 税法の解釈の相違:納税者と税務署の間で、経費の判断基準に見解のズレがあった場合
  2. 記帳や帳簿の不備:事業用経費であることを客観的に証明する記録が不足していた場合
  3. 意図しない計算ミス・記入漏れ:制度の理解不足や転記ミスなどによるもの

特に経費の範囲に関しては、法的なグレーゾーンが存在する部分もあり、「ごまかし」ではなく「見解の不一致」によって税額が修正されることは珍しくありません。自営業者全員が不正をしているわけではなく、経費判断に余地がある仕組みゆえに、解釈や記録の違いが生まれやすいという構造を正しく理解することが大切です。

5. 自営業者が今日から取り組みたい「根拠ある申告」への備え

ここまで見てきたように、自営業者として注力すべきなのは「9:6:4の真偽」を気にすることではありません。自身の確定申告において、税務署に対して「客観的な根拠をいつでも説明できる状態」を整えておくことです。

経費の判断に幅があるからこそ、その判断に至った基準や履歴を後から説明できる形で残しておくことが、自身の事業と納税を守る最大の盾になります。

経費・記帳の健全性チェックリスト

  • 自動車、家賃、水道光熱費などの按分割合を、使用時間や面積など「客観的かつ合理的な基準」で定めているか
  • その按分基準を定めた根拠を、書面やデータなどの記録として手元に残しているか
  • プライベートの生活費と事業用の支出を、口座やクレジットカードの段階で明確に区分しているか
  • 売上と経費の入出金を、後回しにせずこまめに記帳しているか
  • 領収書や請求書、契約書などの証憑類を、税法のルールに準拠して適切に保存しているか
  • 経費として処理してよいか迷う支出について、なぜ事業に必要だったのかを第三者に説明できるか

もし一つでもあいまいな箇所があれば、そこが将来の税務リスクになり得る部分です。

近年はクラウド会計ソフトの普及により、銀行口座やクレジットカードとの同期機能を使って、日々の入力作業や家事按分の処理を自動化し、記録をシステム上に残しやすくなりました。「正しい申告を行いたいが、忙しくて日々の記帳や基準作りが後回しになってしまっている」という方は、こうしたデジタルツールを導入し、仕組みから整えていくのが現実的な対策です。

6. よくある質問

Q. クロヨンの「9:6:4」は、現在も正しい数字ですか?

A. 現在の正確な実態を示す公式な数字として扱うのは適切ではありません。所得把握の仕組みに差があることは事実ですが、税務当局は所得捕捉率の公式統計を公表しておらず、近年の研究でも推計手法によって見方が分かれます。

Q. 自営業者は会社員より税務上有利なのですか?

A. 単純に「有利」とは言えません。自営業者は実際の必要経費を差し引ける一方で、売上・経費・按分基準を自ら整理し、説明できる状態にしておく責任があります。会社員にも給与所得控除という仕組みがあります。

Q. 家事按分はどのように決めればよいですか?

A. 使用時間、使用面積、走行距離など、第三者にも説明しやすい客観的な基準で決めることが大切です。毎年基準が変わる場合は、その理由も記録しておくと安心です。

Q. 経費にできるか迷う支出は、どう扱うべきですか?

A. 「事業との関係を説明できるか」「証拠資料が残っているか」「私的利用分を除外できているか」を確認してください。迷う支出ほど、領収書だけでなく、目的や相手先、業務との関係をメモしておくことが重要です。

7. まとめ

  • クロヨン(9:6:4)は、会社員、自営業者、農業者の間で所得の把握されやすさに差があることを示した、歴史のある税制上の議論です。
  • 税務当局は捕捉率を公表しておらず、「9:6:4」という比率は公式な統計値ではありません。
  • 近年の実証研究では「格差は縮小している」とする見解がある一方、「依然として一定の捕捉漏れが生じている」とする推計もあります。
  • 申告漏れの指摘には、悪質な不正だけでなく「税法の解釈の違い」や「単純な記載ミス」も含まれます。
  • 自営業者にとって本当に必要な対策は、経費の按分基準を明確にし、日々の取引に対して客観的な根拠を残して記帳・申告することです。

経費の按分比率の決め方や、記帳の根拠づくりに少しでも不安を感じる方は、まず現在の運用体制を振り返ってみてください。

日々の記帳から確定申告までのプロセスを仕組み化し、安心して本業に専念できる環境を作りたいとお考えでしたら、クラウド会計を活用した記帳・申告サポートを行っている「でらくらうど(税理士 佐治英樹)」までお気軽にご相談ください。

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8. 参考資料・免責

本記事の位置づけと参考資料

本記事は一般的な情報提供を目的とした解説です。税法・通達・行政運用は変更される可能性があります。実務判断は、最新資料と個別事情に基づき、税理士などの専門家にご相談ください。

投稿者プロフィール

佐治 英樹(さじ ひでき)
佐治 英樹(さじ ひでき)税理士 (名古屋税理士会 税理士番号:113665号), 行政書士 (愛知県行政書士会:11191178号), 宅地建物取引士(宅地建物取引士愛知:063293号), AFP (日本FP協会)
「 税理士業はサービス業 」 をモットーに、日々サービスの向上に精力的に取り組む。
趣味は、筋トレとマラソン。忙しくても週5回以上走り、週4回ジムに通うのが健康の秘訣。
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