東大AI松尾研の資料に隠されたヒントとは?創業社長が知るべき日本の「DX伸びしろ」と次の一手
お役立ち情報こんにちは!名古屋市でクラウド会計導入・経理DXをサポートする佐治税理士事務所の「でらくらうど」です。
創業期の経営者の皆様は、新しい技術や経済のトレンドにアンテナを張られていることと思います。今回は、日本のAI研究の最前線を走る東京大学の松尾豊教授率いる「松尾・岩澤研究室(松尾研)」が公開した資料の中に、実は創業期のビジネスにも大きなヒントを与えてくれる「日本の伸びしろ」を示すデータが含まれていましたので、これを分かりやすく解説します。この記事を読めば、マクロな視点から自社の成長戦略、特にDX推進の具体的な一歩を考える新しい気づきが得られるはずです。
日本のAI(人工知能)研究と言えば、多くの方が東京大学の松尾豊教授の名前を思い浮かべるのではないでしょうか。松尾教授とその研究室(松尾・岩澤研究室、通称:松尾研)は、まさに日本のAI分野を牽引する存在です。
先日、そんな松尾研が総務省の「情報通信審議会 情報通信政策部会(第65回)」で発表した資料が、松尾研のウェブサイトでも公開されました(※ページ下部参考資料参照)。AIの最新動向や今後の展望などがまとめられた資料なのですが、その中に、各国の経済状況とデジタルトランスフォーメーション(DX)の進捗を比較した興味深い図が含まれていました。
AI戦略を考える上で、マクロな経済環境やデジタル化の現状を把握することは非常に重要です。この図は、まさにそうした背景情報の一つとして提示されたものと考えられますが、読み解いていくと、AIのような最先端技術の活用可能性だけでなく、中小企業や創業期の企業にとって、もっと身近な業務効率化や経営改善に繋がるヒントも見えてきます。
今回は、この松尾研の資料にある図をより分かりやすくするために、いくつかの要素に分解しながら、特に創業期の皆さんのビジネスに役立つ可能性のある「日本の伸びしろ」について、ステップを踏んで一緒に考えていきたいと思います。
ステップ1:国の経済力「GDP」とは? 各国の規模を比べてみよう
まず、経済のニュースなどで頻繁に目にする「GDP」という言葉から確認しましょう。
- GDP(国内総生産)とは?
とても簡単に言えば、「一定期間内に、国内で新しく生み出されたモノやサービスの価値(儲け)の合計金額」のことです。このGDPが大きいほど、その国の経済活動が活発で、経済規模が大きいことを意味します。
下のグラフは、主要国のGDPの大きさを相対的に比較したものです(アメリカを100としています)。この横棒の長さが、それぞれの国の経済規模を表していると考えてください。

このグラフからわかるように、アメリカが最も大きく、次いで中国となっています。松尾研の資料でも触れられていますが、日本のGDPは、アメリカの約16%(だいたい1/6くらい)の規模です。「経済の大きさだけを見ると、日本はアメリカや中国に比べて小さいんだな」という点を、まずはこの横棒の長さのイメージで捉えておきましょう。
ステップ2:DXとは? 「DX未実施企業」の割合を見てみよう
次に、最近よく耳にする「DX」と、それに関連する「DX未実施企業」について見ていきましょう。
- DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?
これは、「会社がデジタル技術(AI、クラウド、インターネット、スマホなど)をフル活用して、仕事のやり方やビジネスの仕組み、さらには企業文化までを根本から変革し、競争力を高めていく取り組み」を指します。単にパソコンを使う、ということではなく、デジタルを前提にビジネス全体をデザインし直すイメージです。 - 「DX未実施企業」とは?
その名の通り、まだ本格的にDXに着手できていない、あるいは取り組み始めたばかりで十分に進んでいない会社のことです。
下のグラフは、主要国における「DX未実施企業の割合」を示したものです。この縦棒の高さが、それぞれの国でDXがまだ進んでいない企業の割合を表しています。

このグラフで特に注目すべきは、日本のDX未実施企業の割合が、他の主要国と比べて突出して高いという点です。松尾研の資料の元データ(総務省調査)によると、日本の企業のうち約52%、つまり半分以上がまだDXを本格的に進められていないのです。これはアメリカ(約21%)やドイツ(約12%)と比べても非常に高い数字です。
「DXが遅れているなんて、良くないことじゃないか」と感じるかもしれません。しかし、これは見方を変えれば、「これからDXを進めることで成長できる余地(=伸びしろ)が、他の国よりも圧倒的に多く残されている」とも言えます。
創業間もない皆さんにとっても、DXは決して他人事ではありません。顧客管理をデジタル化したり、クラウド型の会計ソフトを導入したりすることも、立派なDXの第一歩です。
ステップ3:「DX余地」とは? – 2つのグラフを掛け合わせて見える日本のポテンシャル!
さて、いよいよ本題の、松尾研の資料に示されている図を見てみましょう。この図は、ステップ1で見た「GDP(経済規模、横棒の長さ)」と、ステップ2で見た「DX未実施企業の割合(縦棒の高さ)」を掛け合わせた「面積」で、各国の状況を比較しています。
「GDP(国の経済規模)」×「DX未実施企業の割合」=『DX余地』
この『DX余地』とは、「その国の経済規模の中で、まだDXによって改善や変革が期待できる部分が、どれくらいの大きさ(潜在的な市場規模や成長の可能性)を持っているか」を大まかに示したものです。つまり、ステップ1の横棒の「横の長さ」とステップ2の縦棒の「縦の高さ」を掛けた長方形の「面積」が、この『DX余地』を表していると考えてください。

この図を見ると、以下の点が読み取れます。
- アメリカ:GDPは最大ですが、DX未実施企業の割合は比較的低い(ステップ2の縦棒が短い)。このアメリカの「DX余地(面積)」を基準の「100」としています。
- 日本:ここが重要です!GDPはアメリカの16%程度(ステップ1の横棒が短い)ですが、DX未実施企業の割合が非常に高い(ステップ2の縦棒が一番長い)ため、この2つを掛け合わせた結果である「面積(DX余地)」は、なんとアメリカの「37」にも達します。これは、GDP規模で日本を上回るドイツ(面積9)や、GDPが近いインド(面積14)よりもはるかに大きな「DX余地」を持っていることを意味します。
つまり、日本は経済全体の大きさでは見劣りする部分があっても、「まだDXが進んでいない領域」という観点で見ると、非常に大きなポテンシャルを秘めているのです。
これは、創業期の皆さんにとって、「世の中には、まだ効率化できる業務や、デジタル化によって解決できる課題がたくさん残っているかもしれない」という、大きなビジネスチャンスを示唆していると言えるでしょう。
ステップ4:大きな「DX余地」は、経理DX・業務効率化の大きな「伸びしろ」!
この大きな「DX余地」は、AIのような最先端技術の活用可能性を示すと同時に、もっと身近で、特に創業期の企業にとって喫緊の課題である「バックオフィス業務の効率化」、すなわち「経理DX」の大きな伸びしろをも意味しています。
考えてみてください。「DX未実施企業が多い」ということは、
- まだ紙の伝票や手作業での帳簿付けが多い
- Excelでの集計に多くの時間を費やしている
- リアルタイムで経営状況を把握できていない
といった企業がたくさんある、ということです。
創業して間もない時期は、社長自らがあらゆる業務をこなし、とにかく時間が足りないことが多いはず。そんな中で、経理業務に多くの時間を取られていては、本業である事業開発や顧客対応に集中できません。
ここに、クラウド会計ソフト(例えばfreeeやマネーフォワードなど)を活用した「経理DX」の大きなチャンスがあります。
- 銀行口座やクレジットカードの取引データを自動で取り込み、仕訳を自動提案してくれるため、手入力の手間が激減します。
- いつでもどこでも最新の経営数値を把握でき、迅速な意思決定に繋がります。
- 請求書の発行や経費精算もオンラインで完結でき、ペーパーレス化も進みます。
- 電子帳簿保存法など、法改正への対応もスムーズです。
日本の「DX余地」が大きいということは、こうしたクラウド会計などのデジタルツールを導入し、経理業務を劇的に効率化できる企業がまだまだたくさんあるということ。まさに、ここが皆さんの会社が「伸びる」ための具体的なアクションポイントなのです。
AIのような高度な技術活用も将来的には視野に入ってくるかもしれませんが、まずは足元の業務、特に毎月必ず発生する経理業務のDXから着手することが、創業期の企業にとっては最も現実的で、かつ効果を実感しやすい一手と言えるでしょう。
まとめ:日本の「伸びしろ」を、自社の成長エンジンに変えよう!
今回解説した松尾研の資料が示すように、日本は「DXが遅れている」からこそ、これからデジタル技術を積極的に取り入れることで、大きな成長が期待できる国です。
創業期の経営者の皆様には、この大きな「伸びしろ」を、ぜひご自身のビジネスの成長機会と捉えていただきたいと思います。
- 「うちの会社の経理業務、もっと効率化できないだろうか?」
- 「クラウド会計を導入して、本業にもっと時間を使えるようにしたい!」
- 「数字をリアルタイムで把握して、もっと的確な経営判断をしたい!」
もしそうお考えなら、ぜひ一度、私たち佐治税理士事務所の「でらくらうど」にご相談ください。当事務所の「でらくらうど」サービスは、まさに愛知県で創業されたばかりの皆様が、クラウド会計ソフトの導入から日々の経理・申告業務までスムーズに進められるよう、一気通貫でサポートするものです。
お客様の状況に合わせて、業務フローの見直しからツールの選定・導入、そしてその後の運用まで、伴走しながらお手伝いさせていただきます。経理DXを通じて、「もっと楽に、もっとスマートに」本業に専念できる環境づくりを、私たちと一緒に始めませんか?
読者の皆様が活用できそうな視点・テクニック
- 視点の転換:「DX未実施」は自社の課題解決と成長のチャンス!
業界全体や競合他社が「まだDXが進んでいないな」と感じる部分があれば、それは新しいサービスや効率的な仕組みを導入することで、他社に先駆けて優位性を築けるチャンスかもしれません。特にバックオフィス業務の非効率は、多くの企業が抱える共通の課題です。 - 小さなDXから始める:まずはクラウド会計で経理の効率化を体感!
「DX」と聞くと大掛かりなものを想像しがちですが、まずはクラウド会計ソフトを導入して、日々の経理業務を効率化することから始めてみませんか?- 具体的にできることの例:
- 銀行口座やクレジットカード明細の自動取り込み・自動仕訳
- スマートフォンからのレシート読み取り、経費精算
- オンラインでの請求書発行・送付
- リアルタイムでの試算表確認
- 当事務所の「でらくらうど」では、お客様の状況に合わせたクラウド会計ソフトの選定から導入、運用サポートまで行っています。
- 具体的にできることの例:
FAQ(よくあるご質問)
- Q1: GDPって、私たちのビジネスに直接関係あるんですか?
A1: GDPは国全体の経済の健康状態を示すようなものです。GDPが伸びている時期は、景気が良く、モノやサービスが売れやすい傾向があります。直接的に日々の売上に結びつくわけではありませんが、大きな経済の流れを掴む上で参考になる指標です。 - Q2: DXとIT化って、何が違うんですか?
A2: IT化は、主に既存の業務を効率化するために個別のITツールを導入すること(例:紙の書類をExcel管理にする)を指します。一方、DXは、デジタル技術を前提として、ビジネスモデルや業務プロセス、さらには組織文化までを根本から変革し、新しい価値を生み出すことを目指す、より戦略的で包括的な取り組みです。クラウド会計導入も、単なるIT化ではなく、経理業務全体のあり方を見直すDXの一環と捉えられます。 - Q3: クラウド会計ソフトを導入する具体的なメリットは何ですか?
A3: 主なメリットとしては、①経理業務の時間短縮(自動取込・自動仕訳)、②場所を選ばない作業環境(インターネットがあればOK)、③リアルタイムな経営状況の把握、④ペーパーレス化の推進、⑤法改正への迅速な対応、⑥税理士とのデータ共有の容易さ、などが挙げられます。これにより、経理担当者の負担軽減はもちろん、経営者はより迅速で的確な意思決定ができるようになります。 - Q4: なぜ税理士にクラウド会計導入やDXの支援を頼むと良いのですか?
A4: 税理士は、単に会計ソフトの操作を教えるだけでなく、お客様の業種や規模、業務フローに最適なツールの選定や初期設定、さらにはデジタル化を前提とした新しい経理体制の構築までサポートできます。また、税務・会計の専門家として、導入後のデータが正しく処理されているかを確認し、経営分析や節税対策といった付加価値の高いアドバイスに繋げることができます。特に創業期は、専門家と二人三脚で仕組みを作ることが、将来の成長基盤を固める上で非常に有効です。
参考資料
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- 資料名: AIの最新動向とエコシステムの展開 (総務省 情報通信審議会 情報通信政策部会(第65回)令和7年4月17日 配付資料65-1-1)
- 公開元: 東京大学 松尾・岩澤研究室(松尾研)ウェブサイト
- URL: https://weblab.t.u-tokyo.ac.jp/news/20250417/
(上記資料27ページに、本記事で解説した「日本のAI活用の可能性:伸びしろが大きい」の図が掲載されています。)
投稿者プロフィール
- 税理士 (名古屋税理士会 税理士番号:113665号), 行政書士 (愛知県行政書士会:11191178号), 宅地建物取引士(宅地建物取引士愛知:063293号), AFP (日本FP協会)
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「 税理士業はサービス業 」 をモットーに、日々サービスの向上に精力的に取り組む。
趣味は、筋トレとマラソン。忙しくても週5回以上走り、週4回ジムに通うのが健康の秘訣。